企業や自治体においてメタバース導入のプロジェクトが立ち上がった際、「専門用語が多くて実態が掴めない」「自社のセキュリティ要件や予算感に対して、どの手法が最適なのか判断が難しい」というケースが多く見受けられます。
メタバース構築においてつまずく原因は、3DCGのクオリティ不足ではなく、事前の「参加者の閲覧環境の考慮漏れ」や、公開後の「運用体制の不足」に起因する傾向があります。
本記事では、エンジニア向けの技術的な「作り方」ではなく、ビジネスの現場で求められる法人向けのメタバース構築方法の選び方と意思決定の基準を解説します。
読了後には、自社の目的に合わせて最適な構築手法を選択し、プロジェクトを安全かつ確実に前進させるための基準が整理できている状態を目指します。
佐藤 旭:起業家Vtuber / Unlimited Potential代表 / ミライLaboプロデューサー
愛・地球博20周年祭「ミライLabo 2nd」や地方創生プロジェクトに参画。
メタバースを活用し、人と地域・社会をつなぐ新しい価値づくりに取り組んでいます。
この記事の目次
企業・自治体がメタバース構築で直面する課題と「3つの判断基準」
具体的な構築手順やプラットフォームの比較に入る前に、まずは行政・企業担当者が直面しやすいボトルネックを把握しておくことが重要です。
システム選びや外注先選びで迷った際は、以下の「3つの基準」に沿って要件を整理することで、無駄な予算消化や運用での失敗を未然に防ぐことができます。
目的と「参加者の閲覧環境(スマホ・PC・VR)」のギャップ
メタバース空間のビジュアル表現(リッチな3Dグラフィックなど)ばかりに目が行き、実際のターゲットとなる参加者の閲覧環境(参加端末)を見落としてしまう失敗は少なくありません。
例えば、一般消費者や幅広い年代の住民をターゲットにした施策であるにもかかわらず、ハイスペックなゲーミングPCや専用のVRアプリのインストールが必要な環境で構築してしまうと、参加のハードルが極端に上がり、十分な集客が見込めなくなります。
そのため、ターゲット層のITリテラシーや利用デバイスを想定し、スマホや一般的なWebブラウザから手軽にアクセスできるメタバース構築方法を選ぶことが、プロジェクトを成功させる第一の判断基準となります。
セキュリティ・ガバナンス要件(SSO・アクセス制限など)
企業や行政のプロジェクトにおいて、法人向けの強固なセキュリティ要件のクリアは避けて通れません。
個人クリエイターやコンシューマー(一般消費者)向けに提供されている既存のプラットフォームをそのまま業務利用しようとすると、詳細なアカウント管理や、特定のユーザーだけを入室させるアクセス制限(SSO連携など)が実装できないケースがあります。
情報漏洩のリスクを払拭できず、社内ガバナンスの基準を満たさないとして稟議で差し戻されるケースが後を絶ちません。
総務省が公表した「社会課題の解決に向けたメタバース導入の手引き」においても、利用開始にあたって個人情報等のセンシティブな情報を取得しない仕組みづくりや、サービス上での活動ガイドラインの提供が不可欠であると明記されています。
単に空間を作れるかだけでなく、公的機関が推奨するセキュリティ要件に適合するシステム基盤を用意できるかどうかが、二つ目の重要な基準です。
参考記事:【総務省】メタバース導入の手引き
空間構築後の「イベント運用体制」の確保
メタバース空間の「完成・公開」をゴールに設定してしまうと、公開後に誰も訪れない、あるいはトラブルに対応できないという事態に陥りがちです。
経験則として、プロジェクトの成否は空間構築後のメタバースイベントの作り方にも大きく依存します。
- 当日の参加者サポート(操作方法の案内など)を用意する。
- 不適切ユーザーの対応や荒らし対策を講じる。
- 司会進行やアバター登壇者の台本を作成する。
実際に弊社が企画・運営を支援した数百人規模の法人向けメタバースイベント事例でも、事前の進行台本作成に加え、当日の参加者案内やアバター誘導のサポートスタッフとして、常に3〜5名体制での稼働が必須でした。
これらを含めた実務的な運用体制を自社リソースのみで賄えるのか、あるいは企画の段階から一気通貫で支援できる専門の制作会社が必要かを見極めることが、三つ目の基準となります。
メタバース構築方法の比較:自作(DIY)と外注の合理的な選び方
先述した3つの判断基準を踏まえた上で、実際のメタバース構築方法は大きく分けて「自社リソースによる内製(自作)」と「専門の制作会社への外注」という2つのアプローチが存在します。
どちらの手法を選ぶべきかは、プロジェクトの目的や用意できる社内体制によって異なります。ここでは、それぞれの特徴と稟議の根拠となる合理的な選び方を客観的な視点で整理します。
| 比較項目 | 既存ツールによる自作(DIY) | 専門の制作会社へ外注 |
|---|---|---|
| 初期費用感 | 数十万円程度に抑えやすい 既存のプラットフォームや市販のアセット(素材)を活用するため、安価にスタート可能。 |
300万〜1,000万円以上 要件定義の深さや独自開発のスコープにより変動するが、初期投資は大きくなる。 |
| 法人向けセキュリティ・ガバナンス要件 | 対応が困難なケースが多い 一般消費者向けツールでは、詳細なアクセス制限やSSO(シングルサインオン)連携が難しい。 |
自社の要件に適合可能 エンタープライズ向けの強固な基盤選定や、独自開発によって稟議基準をクリアできる。 |
| 空間デザイン・UI/UXの独自性 | 既存のテンプレートに依存。 企業ブランドや世界観を完全に反映させることは難しく、他社と似た空間になりがち。 |
完全オリジナルの空間・アバター制作が可能 ブランドガイドラインに沿った設計や、参加者が迷わない独自の動線設計を実現できる。 |
| 運用時の社内負担・イベント体制 | 学習コストと当日の運用負荷が高い 社内リソースのみでシステムの学習、集客、トラブルシューティングを行う必要がある。 |
企画から当日のオペレーションまで一気通貫で任せられる 専門家のサポート体制により、実務担当者の業務負担と事故リスクを劇的に軽減できる。 |
既存プラットフォームを利用した自作のメリットと限界
既存のメタバースサービス環境を利用して空間を自作(DIY)する最大のメリットは、初期費用を大幅に抑えられる点にあります。
市販の3Dモデルやアセット(素材データ)をうまく活用すれば、ゼロからCGを作り込む手間を省き、スピーディーに空間を立ち上げることが可能です。
しかし、行政や企業での法人利用においては、内製化に明確な限界が存在します。
例えば、Unityなどの専門的なゲームエンジンを用いた開発環境を扱う場合、担当者にはプログラミングや3Dモデリングの高い学習コストがのしかかります。
また、無料または安価なプラットフォームの多くは一般消費者向けに設計されているため、「参加者の詳細な行動ログ取得」や「独自のアクセス制限(SSO連携等)」といった法人ならではの機能要件を満たせないケースが多く見受けられます。
結果として、「目先の構築費用は抑えられたものの、法人のセキュリティ基準を満たせず実運用に乗らなかった」という事態に陥るリスクがある点を、意思決定の段階で認識しておく必要があります。
制作会社へ外注(独自開発)するべきケースと費用相場
一方で、プロの開発会社へ外注するべきケースは、「独自のブランド体験(UI/UX)を提供したい場合」や「数百人規模の同時接続を安定して処理したい場合」、そして「強固なセキュリティ環境下での独自開発が求められる場合」に該当します。
専門会社に依頼することで、要件定義から3D空間の設計、さらには前述した「イベント当日の集客や運用体制の構築」までを一貫して任せることができ、実務担当者の業務負荷は劇的に軽減されます。
気になる費用相場ですが、既存のビジネス向け基盤を活用したカスタマイズであれば100万〜300万円程度、ゼロからの独自開発や社内データベースとの大規模なシステム連携を伴う場合は500万〜1,000万円以上となります。
これは、弊社(UP Blog運営元)がこれまで自治体や企業様向けに支援・お見積りを行ってきたメタバース制作案件の実データに基づく実勢価格です。
具体的な費用の内訳や稟議での説明ポイントについては、以下の費用相場記事も併せてご参照ください。
失敗を防ぐ法人向けメタバース構築の全手順(5ステップ)
メタバースのプロジェクトを安全かつ計画通りに進行させるためには、順序立てたプロセスが不可欠です。
ここでは、法人特有の厳しい要件をクリアし、失敗を未然に防ぐためのメタバース構築方法の全手順を5つのステップで解説します。

ステップ1:目的設定とKPIの定義
プロジェクトの起点となるのが、目的設定とKPI(重要業績評価指標)の明確な定義です。
「とりあえず最新技術のメタバースを作ってみたい」という曖昧な動機では、投資対効果(ROI)を証明できず、稟議を通すことが困難になります。
実際に、PwCコンサルティング等の民間調査でも、企業のメタバースビジネスにおける最大の課題として「投資対効果(ROI)の不透明さ」が毎年上位に挙げられています。
企業や自治体におけるビジネス活用においては、イベントの来場者数や商談獲得数など、「何をもって成功とするか」を定量的な数値で定めることが、プロジェクト全体の方向性を決める最大の鍵となります。
参考記事:【PwC】米国企業・消費者メタバース調査 2022
ステップ2:要件定義とプラットフォームの選定
目的が明確になったら、次に詳細な要件定義とプラットフォーム選定へと進みます。
前述した「参加者の閲覧環境」や「セキュリティの基準」と照らし合わせながら、自社の用途に最適なシステムの選び方を決定します。
専用アプリのインストールが必要な高機能ツールを選ぶのか、あるいはスマホのブラウザから手軽にアクセスできるシステムを選ぶのか。
ここで要件とプラットフォームの仕様にズレが生じると、後の工程で取り返しがつかなくなるため、客観的で慎重な見極めが求められます。
ステップ3:空間デザインと3Dアバターの制作
システム基盤が決まった後、実際の空間制作へと移行します。
ここでは、企業のブランドガイドラインや自治体の景観イメージに沿ったデザイン要件が求められます。
また、参加者の分身としてコミュニケーションの軸となる3Dアバターについても、フォーマルなスーツ姿にするのか、親しみやすいキャラクターにするのかを検討します。
単に見た目を豪華なCGにするのではなく、ユーザーが迷わずに目的の情報を取得できる動線設計(UI/UX)を取り入れることが、実用性の高い空間を構築するための合理的な基準となります。
ステップ4:テスト環境での動作検証と負荷テスト
空間が完成しても、即座に一般公開へと踏み切るべきではありません。本番環境への移行前に、必ずテスト環境での入念な動作検証を実施するステップが必須です。
法人のイベントや記者発表などでは、多人数が同時に接続した際のサーバーの負荷耐性や、マイク・スピーカーの音声トラブルの有無を確認することが特に重要視されます。
事前に予期せぬエラーを洗い出し、適切なトラブルシューティングの手順をマニュアル化しておくことが、当日の重大な事故を防ぐ最善の防衛策です。
ステップ5:公開とイベント当日の運営体制構築
最終ステップは、空間の正式な公開と、イベント運営の体制構築です。
メタバース空間への集客プロモーションに加え、当日の司会進行台本の作成、不適切なユーザーへの対応、参加者からの問い合わせ窓口となるサポート体制の配置など、実務担当者が直面するタスクは多岐にわたります。
空間システム自体の完成はゴールではなく運用フェーズのスタートであり、安定した運営体制と参加者への手厚いサポートを用意できるかどうかが、メタバース施策の最終的な成否を決定づけます。
【法人向け】メタバース構築で検討すべきプラットフォームの方向性
これまでの手順を踏まえた上で、法人としてメタバース構築方法を検討する際、具体的にどのようなプラットフォームを選定すべきか、大きく2つの方向性を提示します。
自社の目的やターゲット層のITリテラシーに合わせて最適な基盤を選択することが、投資対効果を高める鍵となります。

ブラウザベースで参加障壁が低いツール(Vket Cloudなど)
自治体が主催する住民向けのオープンな施策や、幅広い年代の一般消費者をターゲットとする場合、専用アプリのインストール不要で手軽に参加できるWebブラウザベースのプラットフォーム(Vket Cloudなど)が有力な選択肢となります。
高スペックなPCやVRゴーグルを持たないユーザーであっても、日常的に使用しているスマートフォンやPCのブラウザからURLをクリックするだけでアクセスできるため、参加のハードルを劇的に下げることが可能です。
「より多くのユーザーに体験してもらい、認知拡大や接点創出を図ること」を第一の目的とする場合、閲覧環境への依存度が低いブラウザ完結型のツールを選ぶことが、集客面での失敗リスクを抑える最も合理的な判断となります。
大規模イベントや独自の要件に適したシステム
一方で、数千人から数万人規模が同時にアクセスするような大規模イベントの開催や、強固なアクセス制限が求められる社内研修・カンファレンスを実施する場合は、より高い処理能力と拡張性を持つシステム基盤が求められます。
既存の汎用的なプラットフォームでは対応しきれない独自のUI/UXや、自社システム(顧客データベースやSSOなど)との連携といった高度なカスタマイズが必要になるケースが多く見受けられます。
この場合、Unity等の開発環境を用いた法人向けの独自開発や、エンタープライズ向けの堅牢な専用基盤を選定する必要があります。
初期の構築費用や開発期間は増加する傾向にありますが、法人としての厳格なガバナンス要件を確実にクリアし、トラブルのない安定した運用を実現するためには必要不可欠な選択肢となります。
よくある質問(FAQ)
メタバース導入を検討される企業や自治体の担当者様から、多く寄せられるメタバースの構築方法に関する疑問を客観的な視点で整理しました。
Q. メタバース構築方法において、自作(DIY)と外注では費用の相場にどのくらいの違いがありますか?
A.既存のプラットフォームを利用した自作の場合、初期費用は数十万円程度に抑えられるケースが多く見受けられます。
しかし、法人要件を満たすために専門の制作会社へ外注し、独自開発や高度なカスタマイズを行う場合、統計的な費用相場は300万〜1,000万円以上となる傾向があります。
自社のセキュリティ基準を満たすための投資として、どのレンジが適切かを判断することが重要です。
Q. 参加者に専用アプリをインストールさせず、スマホから手軽に参加させる構築方法はありますか?
A.はい、可能です。
Vket Cloudなどの「Webブラウザベース」のシステムを選定することで、専用のVRアプリなどをインストール不要とし、ユーザーが普段利用しているスマホのブラウザから直接空間へアクセスできる環境を構築できます。
参加障壁を下げて集客を最大化したい場合に、非常に合理的な選択肢となります。
Q. メタバース空間を構築するまでの期間はどのくらいかかりますか?
A.選択する構築手法によりますが、既存のブラウザベースのツールを利用する場合は最短1〜2ヶ月程度での公開も可能です。
一方、独自の3Dアバターや空間デザインを一から制作し、負荷テストなどの動作検証を含む法人向けプロジェクトでは、3〜6ヶ月程度の期間を要するのが一般的です。
Q. 構築後のメタバース空間でのイベント運営まで依頼することは可能ですか?
A.専門の制作会社であれば対応可能なケースが多いです。
メタバースは空間のシステム構築だけでなく、当日の集客サポート、進行台本の作成、参加者のトラブルシューティングといった実務的なイベント運営体制までを一気通貫で支援できるパートナーを選ぶことが、施策を成功させる重要な基準となります。
まとめ: 構築は手段であり、目的達成に向けた「運用体制」が鍵
本記事では、技術的な専門用語に頼らない、法人向けのメタバース構築方法と意思決定の基準について解説しました。
【本記事の重要ポイント】
- メタバース構築手法の選定は、「参加者の閲覧環境」「セキュリティ要件」「イベント運用体制」の3つの基準で判断する。
- 初期費用を抑える自作(DIY)は、法人ならではのガバナンス要件を満たせないリスクがある点に注意する。
- 安定したイベント運営や独自のUI/UXが求められる場合は、専門の制作会社への外注が最も合理的な選択となる。
- 空間の完成をゴールとせず、公開後のサポート体制までを含めた全手順(5ステップ)を要件定義に組み込む。
メタバース構築は、3D空間を完成させることが目的ではなく、その後のイベント成功やビジネス課題の解決、あるいは住民への新しい価値提供が本来の目的です。
統計的に見ても、事前の要件定義と、公開後の運用設計の精度がプロジェクトの成否を大きく左右します。
冒頭で提示した「3つの判断基準」を参考としてご活用いただき、無駄な予算消化を防ぎ、確実なプロジェクト進行にお役立てください。
自社のセキュリティ要件に適合するプラットフォーム選びに迷われている場合や、「稟議を通すための客観的な費用対効果の算出」に課題を感じている場合は、企画・開発から当日のオペレーションまでを一気通貫で支援する専門の制作会社へご相談ください。
客観的な費用対効果の算出や、稟議に必要な他社事例の整理など、実務担当者様の負担を軽減するための情報提供を行っておりますので、以下のページよりお気軽にご相談ください。
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